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美帆子 第七話
広見さんとのことは美化して思い出を封じ込めていた。
初めての時はほぼレイプに近かった。私はそんな関係になんてなりたくなかった。
妻子いる人だから節度を持っていたのにあっちが勝手に勘違いして……。
でも今思えば勘違いさせてしまった私もいけないのだろうけど。
大島先生も一方的だった。
でも初めて思いを通じ合ってセックスしたのは湊音くんだったわ。今思えば。年々そうでなくなったけども。
彼には本当に申し訳ないことをしたわ。広見さんに対する復讐を湊音くんにしてしまったもの。
広見さんはずっとことあるごとに息子である湊音くんの自慢をしていた。愛する息子、って。大事な大事な息子だと。
……だったらその大事なものに……ってひどいよね。
私は大きく膨らんだお腹を撫でる。無理やりすぎたかもしれないけど私の子供がもうすぐ生まれる。
「駆け落ちするほどの大恋愛だったのに泥沼離婚になっちゃったわね」
三葉と久しぶりに会った。彼女は養護教諭をしていて私の転職先である名門塾のオーナーと繋げてくれて。どういう間ならなんだろうとか思いながらもその名門塾の講師になることになった。しばらくは塾オリジナルのテキストの監修、通信教育の授業のレジュメ作成など。ってそれは子供を保育園に預けてからなんだけど。
「まぁね。慰謝料はトントンだったけど広見さんが個人的に出したいって全部相殺せずに半分もらえるし……養育費もね。でもお金が全てじゃないっていうか」
「美帆子、辛かったのはわかるけど広見先生が一番悪いのに。こんなことしたらあなたが一番悪くなるわ」
「……だよね」
「でもあなたを責めることはしたくないわ。今はそのお腹の中の子を責任持って産んで育てないと」
「うん」
「……自分1人の力で育てるんでしょ、その覚悟は貫けるかしら」
「……大丈夫」
三葉が私の右手を握った。
「いつでも頼って。こんな私だけど」
実習の時に他の実習生から総スカンくらってもそばにいてくれた彼女……その手は温かかった。
そして私は息子を産んだ。
とても可愛い可愛い男の子。
名前を美守と名付けた。
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