11人が本棚に入れています
本棚に追加
校門の前で倫典が待っていた。そして横には三葉先生と……美帆子先生だった。僕は朝のこともあってこの二人の組み合わせを見ると体が疼くが他にも生徒がいるからすぐ気がまぎれた。
「おはよー、鼻血は止まったかな」
「おはよう。もう昨日の時点で止まってるわ」
倫典はニタニタしてるけどなんで先にここにいたんだ? そして美帆子先生たちも。
「教育実習生があいさつ当番として交代で立つのよ。今日は私と美帆子」
美帆子先生はうなずいた。おしとやかな人だ。この二人一緒に並ぶと対だなと思う。倫典は三葉先生みたいなセクシーで大人な色気があるのが好きなんだな。どうりで同級生の女子よりも年上の大人っぽい先輩女子の方がいいとか言っていたわけだ。
僕は……セクシーなのはちょっと……気が引けるというかなんというか。やはり美帆子先生みたいなおとなしそうな人を選ぶ。しゃしゃりでないというか、なんというか。
どっちかといえば今の母さんが三葉先生タイプで死んだ母さんが美帆子先生タイプなんだろう。
家事が得意だけどパワフルすぎる母さんはやはり抵抗があった。だから僕は美帆子先生を選ぶ。
「なにぼーっとしてんだよ湊音」
「あぁ、いやなんでもないんだけど」
「この二人、高校の同級生らしくって。大学は違うけど。偶然再会したらしいよ」
「そうなんだ、だから三葉先生は美帆子先生の事呼び捨てしていたんだ」
「そうそう。さっき教えてくれたんだよ、ねぇ……」
倫典の視線の先には大島が立っていた。ジャージに竹刀を持って。
「おはようさん、倫典。さっきから見てたけどよ……教育実習生のお姉さんたちに朝から絡んでたなぁ、迷惑だろ」
「おはようございます。いや、迷惑だなんて……ねぇ」
美帆子先生も三葉先生も苦笑い。大島が僕のことも見るから今さっき来たばかりなのに同類に思われたくもないので首を横に振った。
にしても大島は今さっき起きたような顔で寝ぐせもひどいしなんて面だ。独身で校内の独身寮に住んでるとはいえだらしない。
「ちょうどよかった、倫典に湊音。朝練に付き合え」
うわ。また来た。大島は剣道部員が少ないから生徒に朝練に付き合えと言って稽古を付けてコテンパンに倒してストレス発散してる最悪な奴だ。
剣道未経験な僕たちに幼少期から剣道をしている大島が、さらに体格差も160センチ台の僕らよりも一回り大きい彼にかなうわけない。
誘われていても逃げてはいたがどうやら今朝は逃げられないようだ。
「ちょっと俺は今から委員会の打ち合わせでぇ~、湊音なら全然お手すきですよ」
と倫典は逃げて行ってしまった。本当最低だ。好きな女性の前でそんなかっこ悪い姿見せるのか。三葉先生は苦笑い。美帆子先生は僕をじっと見ていた。
「なぁ、湊音……やるか?」
これはいつものように逃げるべきか……でも美帆子先生の前でかっこいい所見せたら、でも……美帆子先生は大島と関係を持っている。
どうしよう。
「やんないのか。あ、美帆子先生。当番終わったら授業の打ち合わせあるから顧問室きてくれよ」
「はい」
美帆子先生を見ると少し顔を赤らめていた。……このままでは美帆子先生が昨日のようにこのガサツな男の餌食になる。その時間をつぶすためにも……。
「大島先生」
「なんだ」
「……稽古の相手、受けて立ちますよ」
最初のコメントを投稿しよう!