千里眼、そして冰緒

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千里眼、そして冰緒

 僕には不思議な力がある。比喩表現でも、想像でもない。  僕はこの能力のことを“千里眼”と読んでいる。俺のテストの点が良いのはこの“千里眼”のおかげだったりする。    ところで、僕の目の前には今、わざわざ茶道部の部室を借りて俺に正座をさせている美少女がいるのは何のためだろうか? 想像もつかない。  彼女は制服を見るにこの学校の生徒ではないことは確かだ。となると、わざわざ他校の生徒が俺に告白するために部室を借りるとは考えずらい。 「君は……」   「単刀直入に言う、お前はテストで不正をしたんだろ?」  美少女の言葉を遮りながら扉を開けて入ってきたの柔らかな月の光を溶かし込んだような髪をしたイケメンだ。 「伊吹。そんなに私が信用できなかったの?」  伊吹と呼ばれたイケメンは冷ややかこちらを見つめている美少女を横目に見た後、真っ直ぐ僕を見た。 「この世のには不思議な能力を持つものが一定数いる。それを悪用して犯罪に手を染める者がいるとなれば、必然とそれを取り締まる組織もなくてはいけない……。これがどういう意味かわかるだろう?」  ここまで言われたら誰でも分かる。“千里眼”を悪用した僕を捕まえに来たのだろう。 「ですが、その能力は生まれ持ってしまった言わば、仕方ない、どうしようもない物です。ですから、政府は保持者による犯罪の増加、保持者の身の安全を考慮し、幼稚園から高校まで保持者、それと疑わしい人物。そして、無自覚な保持者をある学園に入れています。一応、強制ではなく、能力を持っていない人の方が多いくらいです」  そもそも、保持者はそうそういないのですが、と美少女は疲れたような目をしながら言った。 「それが俺たちが通う護芽学園だ。本来であればこんな事を保持者に喋らないだがな。ちょっと訳ありなんだ」 「貴方の能力を保持者の捜索に使用したいと考えていまして」  美少女は両手を合わせ、いかにも嬉しそうな顔をした。伊吹は僕と目が合うと何か思い出したように呟いた。 「……ああ。この状態になった冰緒を止める手段はない」  明らかに諦めの目をしている伊吹を見る限り断ったらヤバいことになりそうだということは分かる。 「一つだけ条件がある。妹の安全は必ず守れ」  美少女──冰緒は軽く微笑むと、 「問題ありませんよ。あの学園と寮の警備は厳重なので。しかし、妹さんにも入っていただくことになりますが……」  と、言った。 「それに関しては妹に聞いてからでもいいか?」 「構いませんよ。でも、能力については話さないでください。私が叱られるので」  冰緒は即答した。今まで、能力の存在が一般になっていないのはそれがあるからなのだろう。 「もう一つ。お前たちは何者だ?」  伊吹は顔を強張らせたが、冰緒は無表情で何を考えているのか全く分からなかった。 「私達は護芽学園の生徒会のものです。次は貴方が転入してきたに。また会いましょう、児珠朔夜さん」  冰緒が立ち上がり出ていくと、伊吹もそれを追いかけて出て行ってしまった。
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