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「それで手ごたえはどうだったの?」  璃子が席に戻って来るなり真理が前のめりになり聞いてきた。真理もモラル免許を早く取りたいと言っていたので試験内容に興味津々だ。  試験終わりに璃子は駅前のファミレスで友人二人と待ち合わせていた。休日の昼過ぎだったが人が多く、遅れて来た璃子がドリンクを取りに行くのにも時間がかかったので、もう我慢の限界だったのだろう。 「簡単すぎて拍子抜けしちゃったよ」  私は肩をすくめてそれだけ言うとコーラを飲む。思ったより喉が渇いていたようで半分ほど一気飲みした。 「えーそうなんだぁ。すごく難しいのかと思ってたよぉ」  隣の愛菜が大げさに驚くので、それを否定するように璃子は顔の前で手を振った。 「大人が大げさに言うだけで、あんなの小学生だって百点が取れるって。なのに結果が分かるまで二週間はかかるなんて長すぎだよ」 「じゃあ私も次の試験を受けようかな。璃子も受けたっていえば説得しやすそうだし」 「真理のとこも反対されてんだっけ?」 「そう。モラル免許がないとバイトも出来ないから早く取りたいのに、ダメの一点張りなんだよね。なんで未成年は親の同意なんか必要なんだろ」  璃子はため息をついてそう言った真理に深く同意した。  モラル免許は社会に出るには現代では必須の免許だ。  璃子が生まれるよりずっと前、子供も大人も常識のない人間が増えた時期があったらしい。周りから注目を浴びたいからイタズラ動画をネットに上げる、ちょっとしたことで相手にイラついて煽り運転をする、などなど上げればきりがなかったそうだ。そこで年齢関係なく社会人としての倫理観があるか判断するためにつくられたのがモラル免許だ。  最初は常識のある人間の証明という意味合いが強かったようだが、今ではネットの使用から始まり、運転免許の取得や就職活動もモラル免許がなければ書類を送ることさえできないまでになっている。だから今では学生のうちに取るのが一般的だった。  いちおう受験は何歳でもできるのだが、未成年の場合は親の同意が必要だった。そのせいで璃子もなかなか受験できずにいた。 「ウチもだったけど、どうにかゴリ押したよ。最後には自分で選んだことだから何があっても後悔しないのよって念押しされちゃったけど。でも落ちたって補習受けて再試に受かれば免許取れるんだよね。なんであんなに神経質になってるのか訳わかんない」  モラル免許の取得率は再試も含めれば百パーセントだ。誰もが取れる免許に大人たちが慎重になるのかが不思議だった。真理と一緒に愚痴をこぼしていると愛菜が「それなんだけどぉ」と辺りを伺うように声を落とした。そして手招きをされ、璃子と真理が顔を寄せると秘密を告げるように囁いた。
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