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 そうして試験から二週間後、帰ってくるとダイニングテーブルの上に白い封筒が置かれていた。そして珍しいことに父も帰ってきていた。 「璃子、試験結果が届いているわよ」  疑問に思う前に、母から待ち望んでいた言葉を聞き璃子は封筒に飛びついた。はやる気持ちのまま、手で雑に端の方を破ると中の紙を引っ張り出す。三つに折りたたまれた紙を開いた瞬間、璃子の顔から笑みが消えた。大きく書かれた不合格の文字が飛び込んで来たからだ。 「なんでよ! テストは満点が取れてたわよ!」  何かの間違いだと騒ぐ璃子に母は悲しそうに首を横に振った。 「モラル免許は筆記だけじゃないの。実地試験があるのよ」 「……実地試験?」  初めて聞くことに思わず眉根を寄せた。 「試験官が受験者の日常生活を観察するのよ」 「はぁ!? なにそれ!」 「最後の問題は、道徳的行動を本当に取ることは出来ますかだったでしょう? 本当に出来ているか確認するの。試験官が困った振りをして受験者に近づいたりね」  母の言葉に思い出すのは試験後の自分の行動だ。ファミレスで騒いだことも、老人を無視したことも全部見られていたことになる。いや、あの老人自身が試験官だったのかもしれない。他にも何度か普段話しかけられないような人にも声をかけられた。あれも試験の一環だったかもしれない。  青くなる璃子に母はため息をついた。 「常に周りの人に思いやりをもって接しなさいと言っていたのに。璃子は自分、自分ばかりで治らなかったわね」 「それならそうと、なんではっきり教えてくれないのよ!そうすれば私だって――」 「このことは受験生には秘匿することになっております。お母さまを責めるのは筋違いですよ」  突然響いた知らない声に、璃子は肩を跳ねさせた。
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