アンタと子供の味覚は違う

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アンタと子供の味覚は違う

 私の一人娘の“なっちゃん”こと夏生(なつき)は、おませな上に、とにかく口(うるさ)い。  まだ小学校に入ったばかりだというのに、大人顔負けなくらいの語彙(ごい)力があるのだ。  その理由は恐らく、アニメよりもドラマばかり観ているからだろう。  同級生の間で人気の、年頃の可愛らしい女の子たちが活躍する戦隊アニメは『くだらないわ』とバッサリ切り捨てていた。  かといって、ドラマだったら夢中になって観ているのかというと、ちょっと違うっぽい。  あるとき、動画配信アプリで一昔前にやっていたドラマを観ていたなっちゃん。  ちなみに少しでも視力の低下を防ぐため、私はスマホではなく、いつもテレビで観せるようにしている。  なので、家事をしている私の目にも自然とドラマの内容が入ってきた。 『それでは召し上がれ~!』  前職はフランス料理店の一流シェフだった女性が、堂々とした振る舞いで小学生たちに給食を勧める。  初々しいお子様たちは、恐る恐る食事に手を付け始めたのだが――。 『何これ……。こんなの初めて食べた』 『まずっ』 『いつもと全然ちがーう』  なんと子供たちは次々と不平不満を口にし、箸やスプーンをランチョンマットに置き直してしまった。
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