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『え……ちょ、ちょっと待ってよみんな! どうしちゃったのよ!』
この私が作った料理がまずいですって!? ――元一流シェフとしてのプライドを傷つけられ、ショックと動揺を隠せない女性。
「バカじゃないの」
そんな彼女に向かって、なっちゃんは毒を吐きながらも、小学生たちに代わって明確に非難してみせた。
「アンタと子供の味覚は違うのよ。大人に出すような一流レストランの味なんて、子供がわかるわけないでしょ」
程なくして様子を見にきた、学校給食のベテラン調理員の男性とほとんど同じ意味のセリフだ。
「なっちゃん、今日も冴えてるね! キレッキレだね!」
ベテラン調理員さんのセリフ、全然聞こえない……とか思いつつ。私は三時のおやつに、彼女と同じ愛称で親しまれているオレンジジュースを手渡す。
ふん、とプライドの高い女よろしく――私の父が昔使っていた――ブカブカの伊達眼鏡をくいっと上げたなっちゃん。
「りんごがいい」
「あ、ごめん。はいはい、りんごね」
横目で突き返されたオレンジジュースを慌てて受け取り、私は再びキッチンに戻った。
……おわかりいただけただろうか。
これが我が家のお姫様・なっちゃんである。
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