君は神社にいた

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君は神社にいた

小学6年生の夏。 七夕の日に私、立花優月は定期的に通う病院の隅にある笹に目を止めた。笹はカラフルな短冊が沢山括り付けられている。個々の患者さんたちが書いたものだ。他にも手先が器用な人が作ったのだろう。見事な飾りも一緒に吊るされている。綺麗だなと思ってぼんやりと眺めていた。 「優月ちゃんもよかったらどうぞ」 昔からお世話になってるベテラン看護師の尾上さんに桜色の短冊を渡された。母さんと同じ歳くらいの尾上さん。入院をしなきゃいけない時は本当に尾上さんにお世話になった。第2の母と勝手に思っている尾上さんに渡されたら自然と受け取ってしまった。 「でも尾上さん。私、何を書けばいいか分からないわ」 「優月ちゃん…」 尾上さんは眉を八の字にさせた。しまった。今の発言は尾上さんを困らせてしまうものだったか。 「願い事が沢山あって迷っちゃってるの。ちょっと一人で考えてもいいかしら?」 嘘だった。何も思い浮かんですらない。ずっと病気に苦しんでいてようやくまともに学校に通えるようになったと思ったらクラスに馴染めなくて。いつも独りぼっちだった私に夢なんてなかった。
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