君と花見を

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高校2年生の終業式の日に勇気を振り絞って誘った、あの日の花見。その終わりに僕は里桜さんに告白するつもりだった。ところが僕の勇気は誘うところまでで尽き果てていたらしく…。 絶好のタイミングが来ても、別れの時間が来ても、どうしても好きだと言うことができずに…結局「さよならまた学校で」と言ってしまった。 そして…彼女はそのまま帰らぬ人に…。 あの日から、僕の心の一部は死んでいたのかもしれない。いや、死んでしまったんだろう。僕はずっと立ち止まったままだった。 だから、僕は里桜さんに向き直る。 なにかを察して彼女が僕を見る。 「あの日、里桜さんが死んでから、僕はずっと後悔してるんだ。もっと違う未来があったんじゃないかって。そしてずっと、君に謝りたかったんだ。」 彼女に10年来の想いを口にした。 「僕はずっと、里桜さんのことが好きだ。この気持ちはあの時から変わってないよ。あの日、この気持ちを伝えていたら、何かが変わっていたはずだって。諦めてしまった僕が間違っていたんだって、そう思ってる。」 彼女が少しうつむく。 「勝手な想いさ。でも、またここで、一緒に里桜さんが好きだったこの桜を見たい。また来るから。絶対、何年でも必ず来るから!」 彼女はうつむいたまま、動かない。沈黙が流れた。 「あたしね、今は桜、嫌いなの。」 たっぷり1分ほどして、彼女が呟く。桜を見上げて、言う。 「生きてた頃はさ、桜が咲くの嬉しかったよ。名前にも入っててお気に入りの花だった。でも、この花が咲くたびに、あたしが死んだ日のこと思い出して。痛くて苦しかったことも、どんどん忘れられてく寂しさも全部ツラくて。だから、今はこの花が、嫌い。」 いつも明るく元気でお茶目な彼女らしからぬ、低く、暗い声で紡がれる恨み言。 「ね、深見クン。あたし、気付いてたよ。あの日、きっと今みたいに告白されるのかもって期待してた。」 顔をあげた里桜さんは、寂しそうな笑顔で言った。 「帰りにさ、この桜のとこで、あたしってば自意識過剰すぎ?って恥ずかしくなっててさ。そっか…勘違いじゃなくて良かったよ。」 そんな風に思ってたのかと僕は驚く。 「まぁ、そうやってぼんやりしてたから…狙われたのかもね…。」 里桜さんの顔が曇る。 そう。あの時、僕が行動に出ていれば。 彼女を家まで送っていれば。 いや、もっと早く帰っていたら。 後悔を数えればキリがない。 彼女の死の一因は、間違いなく僕だ。 「ごめん…。僕の勇気が足りなかったせいで、里桜さんを苦しめてしまった。本当にごめん。」 深々と頭を下げる。 …返事は、無い。
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