一年前

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一年前

酷い頭痛で目が覚めた。iPhoneで時間を確かめると、まだ六時だった。画面の眩しさに思わずくしゃみをして、布団に入ったまま、しばらく壁を眺めていた。三月の初め、暖かくはなってきたが朝は相変わらずであり、鼻が片方詰まっていた。 ついにこの日が来たと思った。緊張はしていた。だいぶ早く起き過ぎたと思った。計画では十時半くらいに起きるはずだった。合格発表は十時からだからだ。発表を待ち続けるというのはとても耐えられなかった。 寝たのは深夜三時。十分にゲームをして、十分に身体を疲れさせてから寝たが、不安が疲れを乗り越えてきたらしい。眠りは浅く、ものの数時間で起床。精神的にはかなり参っていた。あまり考え過ぎないようにしていたが、大学入試の二次試験が終わってから、この二週間はまるっきりうわの空だった。 受かっているイメージが自分の中で無かった。決して自分の実力が足りていないとは思っていなかった。しかし大学入試とは一発勝負である。合格できないのであれば、その理由は必ず数学の大問2の(2)(3)、そして大問3の(3)にあると確信していた。なんて事のない基本的なものだが、ここを誤ってしまった以上、合格は無いのかもしれないと思っていた。 確定している未来を、自分はただ布団の中で待ち続けるしかない。その無力さが苦しかった。微かな希望を握りしめて、電卓で自分の点数を予測する毎日。それもあと数時間で終わりである。もう少し寝るだけだ。合格発表まであと少し。気づけばまた眠りについていた。 そして。目が覚めた時には、私は落ちていた。 もう自分ではどうしようもない現実である。
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