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大げさに頭を抱えて机に突っ伏した典子が、
「もうなにもかもわからないよ!」
って、大声でブーブー言った。
「ちょ、ちょっと、静かにしてよ」
「だれもいないじゃん」
焦るわたしを見て、典子が笑う。
たしかに夏休みの図書室にはわたしたち以外に利用者はだれもいなくて、受付席で本を読む図書委員の森田くんは、こっちをチラって見ることもなかった。
「そ、そういうことじゃないでしょ。図書室なんだから」
「磨智はマジメすぎるんだよ」
マジメって言われると、少しだけ胸が痛む。
マジメっていい言葉のはずなのに、マジメってほとんど悪口だ。
わたしは、平凡な家庭で生まれて平凡なお父さんとお母さんとお姉ちゃんに囲まれて育ったから、間違いなく平凡だった。平凡でマジメで、そんな自分に昔からコンプレックスを抱いている。
だけどそんなわたしと違って典子のお父さんは小説家で、それだけでも平凡じゃないのに、そんなことは忘れてしまうくらい典子は変わったコで、わたしはそれが昔からずっとうらやましかった。
小学一年のときに出会ってから、わたしたちはずっと友だちだった。典子は昔からへんなことばっかりして周りのひとたちを驚かせてきたけど、わたしが最初にびっくりしたのは、出会って間もない小学一年生の頃、一緒に公園で遊んでいたときのことだった。
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