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ガラス張りの部屋の中に一匹の鳥が立っている。フラミンゴだ。
頭に何本ものコードが付けられている。フラミンゴの特徴である片足立ちであるが、力なくヨロヨロとしており今にも倒れそうだ。
ガラス張りの部屋に併設された研究室には、ディスプレイがいくつも置かれており、数名が作業をしていた。
「教授、テレビ中継を開始します」
テーブルのコンピュータを操作しながら中年男性が声を上げた。教授と呼ばれた初老の男性が「うむ」と返答する。
「今日は、動物と話しができる装置を開発した研究室にいます。ここにいるフラミンゴちゃんに、全国の子供たちから送られた質問に答えてもらいます!」
中年男性がテーブルに置かれた平べったいマイクに話しかける。その様子を、カメラを肩に乗せた別の男性が撮影した。
「私から質問しよう。では、フラミンゴとの通信回線をオンにしてくれ」
教授が目くばせすると、白衣の女性がスイッチに手を掛けた。
「フラミンゴは、なぜ飛ばないんですか?」
紙を読み上げると、ガラスの向こうのフラミンゴが首を教授の方へ向けた。
「私は、飛べないわけではありません」
室内のスピーカから、男性の電子音声が発せられた。
「じゃあ、なぜ、部屋の中で飛ぼうとしないのかな?」
「私たちは長い助走をしないと飛べません。だから、狭い部屋からは飛び立てないのです」
「なるほど。では、次の質問。あなたが最後のフラミンゴって本当ですか?」
教授は、外見のイメージに似合わないリズミカルな声で言った。
「残念ながらそのようです」
「なぜ、そう思うのですか?」
「耳を澄ましても、仲間の声はもう聞こえないからです」
「自然に生息しているフラミンゴは、調査しても見つかっていません。ここに居る彼が、残念ながら最後のフラミンゴになります。では、次の質問」
教授が軽く咳払いをして続けた。
「フラミンゴが片足を上げるのは、体温調整のためだと聞いたのですが本当ですか?」
「いいえ。それは違います」
教授は、驚きを隠すことができず目を大きく開いた。
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