最後の彼氏

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彼と出会ってから 実を言うと1年も経っていない。 初めて話した彼は 少し堅いような印象を受けた。 勿論初対面だからこその 表情や口調…というのもあるのだが なんとなく 本当に なんとなく 心に小さな南京錠がかかっているような そんな気がした。 今までの経歴や現状 将来の人生設計など 話せば話すほど 彼の中のしっかりとした軸が見えてくる。 私の中で漠然と用意していた答えを 彼はさらに鮮明化している。 会う前に考えていた歳下のイメージと 明らかに彼は違う何かを持っていた。 「しっかりとされていますね。」 これが素直な私の気持ちだった。 少し驚いたような表情をした後ち 彼が少し躊躇しながら口を開く。 「実は僕、結構緊張していて…何を話していたのか、いまいち覚えていないんですよね…」 その時初めて 彼の顔が柔らかくなった。 あれだけ真剣に話していた彼からの 予想もしていなかった言葉に 私は思わず笑ってしまった。 彼もつられて 恥ずかしそうに頬を染めてはにかむ。 この年齢になるまで 人並みにお付き合いはしてきた。 そのどれにも どこを取っても当てはまらない感情が 私の中で静かに湧き上がる。 "もっと 知りたい" それから数回の約束を重ねて 私が彼とお付き合いをするまで 時間はさほどかからなかった。
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