あの日の卵焼き

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「お待たせ」  そう言って雅紀は私の目の前に日替わりランチの乗ったトレイを置き、ミルクティーの横に自分のトレイを置く。  えっ!?  卵かけ唐揚げ丼(400円)!?  雅紀の席にはプルプルの卵とじが艶と温かそうな湯気を出した「卵かけ唐揚げ丼」が置かれている。  卵かけ唐揚げ丼とは、親子丼の鶏肉が唐揚げになった、それはもうS高学生食堂満腹度No.1のメニューだ。  いつもの麺(260円)じゃない!  何で!?  そして雅紀と私の周りの席につく運動部男子達。  え?誰?雅紀の知り合い!?  彼らのメニューを見ると、運動部らしくガッツリ系のメニューばかりだ。 「へぇ、この子が雅紀の彼女。名前なんて言うのー?」 「俺らねー、雅紀の同中なの」 「雅紀が浮気したら殴ってやるから、その時は言ってこいよー」 「馬鹿、浮気するかよ」 「浮気と言えば、幸信がさー!」  私は彼らの勢いに圧倒され、話を振られても適当な相槌すら打てず、黙って日替わり定食を食べていた。  その間も彼らは食べながら最終的に中学校ネタで盛り上がり、「じゃあ、またね、彼女さん」と言って去っていった。 「はー、腹いっぱい。俺らも図書館へ戻ろうぜ…って、何、まだ食べてたのか」  残りわずかだが、私の皿に雅紀が気がつく。 「……なんで今日は麵じゃないの?」  つい不機嫌そうに言ってしまった。 「なんだよ、別に何食べたっていいだろう。……食べたかったんだよ」
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