あの日の卵焼き

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『本日の日替わり サバの塩焼き定食 360円』  私は定食のサンプルを確認し「じゃあ、これで」と360円を雅紀(まさき)に渡す。 「わかった。じゃあ、ミルクティーで。先に席、取っといて」と雅紀は私に100円を渡す。  ここは私達が通うS高校の学生食堂。  土曜日はいつも、彼氏である木村雅紀と一緒に図書館デートをする。  私、橋本由奈にとって初めての彼氏。  そして決まってお昼ご飯はこの学生食堂。  お互いバイトをしていないので、あまりデートにお金はかけられない。  隣の売店で私は二人分のジュースを買う。  雅紀は学生食堂の食券機の列に並び、私が待つ席まで二人分の食事を運んでくれる。  私は大体日替わり定食をチョイスする。  サラダも汁物も付いて栄養バランスが良さそうだからだ。  雅紀は親から500円お昼代としてもらっているらしいが、お小遣いを稼ぐために大体お昼は240円の『うどん』『そば』『ラーメン』のいずれかだ。  ジュースを買っても残り160円。  毎週貯めれば結構な額になる。  いつも閉館の17時には「腹減った」と言いながら駅に向かう雅紀。  そりゃ育ち盛りの16歳には全然足りないお昼ご飯だろう。  なんたって『うどん』『そば』『ラーメン』のトッピングはネギだけなのだから。  ネギ好きの雅紀には問題ないらしいけど…。
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