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*山茶花
・染まる
・ひたむき
・傷跡
「また怪我してる……本当気を付けてよね」
「練習中の怪我なんだから仕方ないだろ」
「そうだけど……」
サッカー部に所属している私の彼氏は、練習のたびにどこかしらに傷を作ってくる。
その手当をするたびに気を付けるように言っているんだけど、フォワードを任されている彼に怪我をするなと言う方が無理があることも分かっている。
チームのために率先してフィールドを駆けている彼は、試合中誰よりもボールに食らいつこうとしているのだから。
けれど、脚や腕にできる傷跡を見る度に、私の心も痛んでしまう。
努力の証だと頭で理解はしていても、気持ちが追い付かないのだ。
「練習試合、一週間後だっけ?」
「そうそう。強豪校と戦える機会なんてそうないから、ちゃんと準備しとかねーとな」
「そっか……頑張ってね」
彼のサッカーへの気持ちがどれほど大きいのか、私なりに理解しているつもりだ。
だけど、それは彼が傷ついていいことの理由にはならないし、どうせなら怪我なく楽しくサッカーをして欲しいと思っている。
サッカーにひたむきな彼がとても愛おしいけれど、それと同時に心配もしてしまうのは、悪いことだろうか。
「……心配、してる?」
「当たり前でしょ。こんなに怪我ばっかりしてきて……心配しないはずがない」
「そうだよな。ごめんな。でも俺、やっぱりサッカーが好きだからさ」
「うん。分かってる。私もサッカーをしてる時の、あの自信に満ち溢れた君を好きになったんだもん」
「うん。ありがとう」
心配だけど、怪我はして欲しくないけど、でも私には彼に頑張ってとそう声をかけてあげることしか出来ないのだ。
サッカーの楽しさに染まっている君が好きだから。
そんな君を応援し続けていたいから。
だから。
「応援行くから。頑張ってね」
「おう、任せとけ!」
今日も私は、思いっきりの笑顔で彼の背中を押すのだ。
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