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*紫陽花
・指輪
・鈍色
・移り気
「結婚しよう」
そう言って、シルバーの輝く指輪を渡してくれた日のことを、もちろん今でも鮮明に覚えている。
あの時はただただ嬉しくて、涙が溢れて、ちゃんと返事をしたかったのにまともに言葉を紡ぐことすら出来なかった。
そんな指輪は今も、私の左手の薬指にしっかりと収まっている。
すっかり鈍色になったそれを、昔も今も、もちろんこれからの未来も外す気は毛頭ない。
結婚した当初は、もしかしたら彼の心の中に移り気が湧き出てしまうのではないかと心配したこともあった。
だけど、今となればそんな心配も杞憂だ。
彼は私を本当に愛してくれている。
この鈍色が、それを証明してくれている。
少し傷ついてしまっているそれを指先でそっと撫でながら、私は囁いた。
「愛してるよ」
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