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「いいことって、なんでこうパノラマみたいに長く続かないんだろうね」
淡いミルクティー色茶髪は夕日に照らされ色濃く輝く学生の、なくなったクレープを見つめながら溢れた吐息は冷え冷えとした大地へ沈むために、二月に相応しい色で消えていった。
「そういう理屈なら、逆に悪いことだって、同じように続かないかもね?明日の真夜中に今日を振り返る一瞬みたいに」
黒髪の少女はみつあみの少女を眺める。今日は恐らく、目に映る少女にとっては切り替えの日で、明日の卒業式を目一杯楽しむための、唯一のブルーな日だったのだろう。
彼女がそういった甘えを見せるのは珍しい。大人になる前にそういった友人を知れて、黒髪の少女には少しだけ嬉しい気持ちがあった。
ゆっくり、ゆっくりと、クレープを包んでいた紙包みを小さく小さく折り畳む。
二人は小さいごみをほぼ同時にくず箱に入れる。
もう一度、赤いメガネを持つ少女は度の無いレンズ越しにミルクティー色の髪の少女が見る。
手入れされた口元からはまるでスパイでなければわからない暗号のように読み取れないほど小さく呟いていた。
「いいこと、続くかな。」
「さあね」
そっけなく返す。
「でも、少なくとも、貴女の悪いことは続かないね。今日がどうだろうが、明日の最後の瞬間には…」
――いいことなんて簡単に作れるでしょう。
黒髪の少女は恥ずかしすぎて、最後までは言わなかったが。
ミルクティー色の甘い髪色の少女はくすりと笑って、帰り道を指差した。
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