アフターエランはウサギとともに

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 真由が生まれた頃はこんな世界になるとは夢にも思っていなかった。  感染症のパンデミックなど清潔な日本に住んでいると、遠い異国の話か物語の世界だとしか思えなかったのだ。  感染力が強く死亡率の高いエランが流行してたった1年で世界は人口の7割を失った。  特にエランに弱かった年配の人や幼い子供にいたっては9割が亡くなり、3年たった今、世界の人口は18億人を切った。  エランが流行する前は80億人を超えていたというのだから信じられない。  人生100年時代といわれていたのが嘘のように、世界の最高年齢は72歳に下がった。  およそ18世紀初頭の人口に突然戻ってしまった世界は、人間だけでは仕事を回すことができなくなっていた。  AIが活躍し始めていた現在でなければ、もっと悲惨な状況だったと思うと考えるだけで恐ろしい。  2年目、3年目の死亡者はぐんと減ったが、これは決して感染力や死亡率が下がったからではない。  人々が家に引きこもる体制が整ったからに他ならない。  それもこれもAIや急遽増産されたロボットが代わりに活躍してくれるようになったからだ。
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