アフターエランはウサギとともに

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 家族を誰一人亡くしていない人など世界中探してもきっといないのだと思う。  苦しみは皆同じなのだとわかっているが、叫びたくなる時がある。  真由に心配をかけたくなくて何とか持ちこたえているが、私がもし独身だったり子供がいなかったとしたら耐えかねていたかもしれない。  感染の危険を避けるため、たとえ家族であろうと最期を看取ることは許されない。  それどころかお葬式さえ上げられないのだ。  エランにかかって亡くなれば、遺骨になって戻ってくるまで家族に会うことはかなわない。  すでに香奈枝も6人の家族を失った。  悲しみに慣れることはないが、ゆっくり悲しんでいる暇もなく次の遺骨が運ばれてくる。  幼い子供を抱える親はエランが流行し始めてすぐに外に出ることを禁止された。  外に出ることができず人との交流を持てない子供たちの心をサポートするためだと、幼い子の親はオンラインでの仕事でさえすることが許されなくなった。  その代わりだと子育て世帯には困らないだけの生活費が与えられたが、こっそり仕事をする者も少なくなかった。
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