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お金の問題ではなかった。
かわいい子供との会話は癒されるが、それだけでは大人は満足できないのだ。
香奈枝も大人には大人同士の会話も必要なのだと実感していた。
中にはまだ物言わぬ乳児と暮らす人もいるのだから、真由と楽しい会話ができる香奈枝はまだ恵まれていたと言えるだろうが、それでも寂しさは拭いきれない。
医療従事者は片方の親だけなら仕事を続けることができたが、これは権利というより義務だった。
医者や看護師に休職してもらう余裕がなかったのだ。
すでに引退した医療関係者も担ぎ出されているが人手不足は解消されず、病院にかかれる人は今や運のいい特別な人となった。
病院を井戸端会議の場所と勘違いしているのではと思われた人たちは、さすがにもう見当たらない。
エランに感染するリスクを避けるため、病院から人々の足は遠のいたが、それでもとにかく医者が足りない。
一度医療現場に出勤してしまったら、仕事を離れても3週間の隔離後しか家に帰ることができない。
医者が3週間も休むのは現実的ではなかったので、真由はネット越しの父親の顔しかもう覚えていない。
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