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正しい判断なのだが、心が追いつかなかった。
人々の心は次第に病んでいき、せっかくエランから助かった人や感染を免れている人たちの中から自ら命を手放すものが現れ始めた。
家族のいる香奈枝はまだいいのかもしれない。
これが家にひとりだったらと思うと、命を粗末にするなと強く言えない自分がいた。
もし世間の多くの人のように子供を失っていたとしたら、香奈枝も正気ではいられなかったに違いない。
猫からうつったエランの死亡率が高いということで、我が家にも回収通知がやってきた。
雨の日に拾ってきた子猫だったレインももう4歳だ。
外に出られない生活の中、真由にとって唯一の友達と言っても過言ではない。
幼い真由に詳しいことは話せていない。
だが、何も話さずレインがいなくなると、真由が外に探しに出てしまいかねないので先に話しておく必要があった。
まだレインとお別れしなければならないと伝えただけだが、嫌だの一点張りで真由は泣き疲れて眠ってしまった。
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