21人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
だが、その日は突然やって来た。
あれから3ヶ月がたったある晩の0時を回った頃、兄から絢香に電話がかかって来たのだ。
「親父が急変した。今夜が峠だって。絢香来れるか?」
絢香は慌てて息子と病院に向かった。
あんなに元気そうにしていたのに、かなりゼーゼーゼーゼーしていて意識もないようだった。
兄が父親の手を握り肩をさすりながら「ひ孫の顔を見るんだろ、頑張れよ!なにやってんだよ!サヤカにやっと子どもができたんだよ!オヤジにとって初めてのひ孫だろ!目を覚ませよ!頑張れ!頑張れよ!……」
兄がずっと父親に話し続けていた。
その光景を見て、絢香はやっぱり親子だったんだ!と叫びたい気持ちを感じつつ、息子と一緒に父親に声かけをした。
ゼーゼーする音にかき消されそうな息子の「おじいちゃん、おじいちゃん」という声。
「聞こえてるよね、お父さん、頑張って!」絢香も耳元で声をかける。
機械音が絶えず鳴っている。
ゼーゼーゼーゼーが酷くなっているように思う。
最初のコメントを投稿しよう!