神様からの最後のひと息

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 絢香は実家に帰る時、必ずといっていいほど、ケーキを買って持って行く。 それは洒落たスイーツ店などではなく、どちらかというと和菓子屋風の隠れた名店の"かねこ"であった。 この"かねこ"、実は絢香が店主にスカウトされてアルバイトをしていた店なのだ。 絢香が高校へ自転車通学しているときに、この店が開店したのだが、知り合いでもないのに、絢香は毎朝、店先にいる店主に「おはようございま〜す」と言って通り過ぎていた。 店主は明るい子だ!と気に入ったらしく、お声が掛かったという経緯である。 絢香は別にアルバイトをさがしていたわけでもないのだが、せっかくだし、お世話になることにした。 絢香はケーキ製作の助手をしたおかげで、この店のケーキがいかに見えないところにまでしっかりイチゴが敷き詰められているのか、モンブランにおいては、あのそうめんみたいなところがシロップ漬けの栗を手が痛くなるほど裏ゴシしたものか、実際にやったことで信頼していたのである。 それ以来、絢香の家族も大好きでケーキと言えば"かねこ"だったのだ。
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