0人が本棚に入れています
本棚に追加
家に入り、どたどたと階段を登り自分の部屋に入ってドアをバタンと閉める。
たまごはベッドに置いて布団を掛ける。
なんとなく。
「蘭ー? 帰ったのぉ?」
階下から母の声がする。
「あ、うん、帰った。」
階段を上る音とノック。私はたまごを背中に隠した。
ドアを少し開け、母が顔を半分だけ覗かせる。
「ちょっとうるさいんだけど。手も洗わずになんなの?」
「いや、ちょっと……。」
「……予備校は?」
「え……えへ。」
母はため息をついた。
「また公園にいたんでしょ。最近あそこ不審者が出るって。危ないわよ。」
「うん。」
確かに危ない。
「もう行っちゃダメよ。」
こくこくと頷く。
うん、もう行かない。また変なものを拾ったら大変。
母はまたため息をついてから言った。
「とりあえず手を洗って着替えなさい。」
「はい……。」
母が去った後、ポケットに入れてあった紙を取り出した。
『孵し方』
どうやら温めなくても放っておけば孵るらしい。お手軽。
でもどこに置いておく?
両親も弟も勝手に人の部屋に入ってくるようなことはないが、万が一ということもある。
結局、私がいる時は布団の中、いない時はクローゼットの中に置いておくことにした。
最初のコメントを投稿しよう!