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1 少年の記憶
「はぁはぁ…大丈夫だよね?バレなかったよね?」
その少年は走って息を切らしながら路地裏に駆け込む。その服は薄汚れ、ボロボロであった。
「僕、こんなこと…」
「ああ、あんちゃん今日ははるばるありがとな。」
様々な果物を並べた屋台に立つ中年のワイルドな男が、目の前で果物を吟味する透き通ったフロスティブルーの長い髪の青年にそう話しかけた。
「いえ。これが私達の役目ですので。」
青年は少しほほえみそう返した。
「ところであんちゃん、そこにあったリンゴは知らねぇか?」
「リンゴなら…たくさんありますが?」
青年は不思議そうに言った。
「いや…気のせいだったかな?なんだかさっきガキがいたような?」
「どういうことです?」
「なくなってるんだよ。リンゴがひとつ。盗まれたか?でもなぜ…」
「そんなことがわかるんですか?」
「いや、そのリンゴがな…」
「その少年、僕が探してきましょう。」
「ほんとかい?いやぁ助かった。よろしく頼むよ。」
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