たまご曜日

3/9
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
 どことなくスーパーの安売りたまごとは違うオーラが漂っている。そのたまごを手に、しばし思案する。1日に1個食べるのは決定している。その1個をどう食べるべきか。調味料はわずか、食材はもやしだけ。これだけで、どうやってこのたまごを美味しく食べろと言うのか。   「よし!まずはシンプルに目玉焼きだ」    余計な物は入れず、まずはたまご其の物の味を楽しもうと、フライパンの上でたまごを割る。トオルがたまごに感じた、普通とは違うオーラは間違ってはいなかった。黄身は大きくハリがあり、鮮やかなオレンジ色。白身もプルンとしていて盛り上がりがある。間違いなく高いたまごだ。    皿に乗せられた、久しぶりに見る目玉焼き。いつもなら胡椒だったり醤油を垂らす所だが、この特別なたまごに対してそれは邪道。何も付けずに食べてみた。   「う、美味い!!」    ただたまごを割って焼いただけ。それだけでも感動せずにはいられなかった。調味料が無くとも黄身は濃厚で甘く、白身はプリプリ。間違いなく、今までに食べた中で一番美味しいたまごだった。   「美味い…美味い…」    たまごの美味しさに感動したからか、久しぶりにたまごを食べたからか、突然もらった優しさに心を打たれたからか、涙がポロポロとこぼれた。たった一つの目玉焼きを、トオルは時間をかけてゆっくりと味わった。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!