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4日かけてじっくり味わったたまごも無くなり、またしても空腹生活に入った。
「腹減った…」
フラフラと力無く歩く。あのおばあさんには元気な顔をしろと言われたが、そんな余裕なはい。
「ちょっとあなた」
聞いた事のあるフレーズだ。もしや!と期待しながら振り向くと、またあのおばあさんが立っていた。
「随分とやつれて…ほら、これでも食べて元気出しなさい」
同じ言葉で、箱を差し出す。
「あの、この前はありがとうございました。たまご、美味しかったです」
「え…?前に会ったかしら?」
その言葉通り、おばあさんはトオルに初めて会ったかのような顔をしている。
「まぁとにかく、若いんだから、もっと元気な顔で歩きなさい」
最後までトオルの事を思い出さず、おばあさんは去っていった。
「オレは夢を見ていたのか?あの目玉焼きは幻?いや!先週も絶対あの人に会ってる」
家に帰って味わったたまごは、間違いなく先週食べたあのたまご。どうしてあのおばあさんは、自分の事を覚えていないのか。謎は残るものの、トオルは貴重なたまごを大切に食べた。
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