3人が本棚に入れています
本棚に追加
1週間後、そのおばあさんはまたトオルの前に現れた。そして、初めて会ったような素振りでトオルにたまごを渡して去って行った。その翌週も、その次の週もおばあさんは現れた。
(もしかして、オレはループしているのか!?一生たまごをもらい続けるという世界に、迷い込んでしまったのか!?)
一瞬そう考えたが、残念ながらそんなドラマティックな小説のような世界で、トオルは生きてはいない。
ただ1つ気付いた事がある。おばあさんが現れるのは、決まって水曜日なのだ。それに意味があるのかは分からないが、トオルは水曜日を〈たまご曜日〉と名付け、初対面のフリをする事で、毎週たまごを受け取り続ける事に成功した。
最初の頃は良かった。貧乏生活の中で、絶品たまごは唯一の楽しみだった。しかし、さすがに飽きてきた。家にある調味料やもやし、他の節約素材でアレンジを加えるが、それにも限界があった。贅沢な悩みだという事は分かっている。それに、自分が稼いだお金で買って食べ続けるもやしとは訳が違う。誰かも分からないおばあさんに、事実を隠して毎週たまごをもらい続けるという事に罪悪感が芽生え、トオルはたまご曜日を終わらせる事にした。
最初のコメントを投稿しよう!