たまご曜日

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「腹減った…」    8本入りのスティックパンがトオルの朝食だ。もちろん、1日に1本。貧乏大学生にとっては、定番の朝食メニューとなっていた。昼は食べず、気合いで乗り切る。講義の後は一旦家に帰り、節約の救世主・もやし料理で命を繋ぎバイトへ出かける。奨学金はもらっているが、バイト代共々家賃と光熱費でほとんど消える。食費にお金はかけられない。米は贅沢品で、もう長い間口にしていなかった。    経済的に厳しい家庭で育ったトオルにとっては、大学に行かせてもらえるだけで幸せだった。トオルが希望した大学は実家から離れた所にあり、一人暮らしが必須。生活費は自分で稼ぐという条件で大学進学が認められた。  若いトオルは、何とかなるだろうという軽い覚悟で大学生活を始めた。しかし現実は厳しかった。若くて体力があると言えども、空腹はトオルを苦しめた。  
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