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僕の初恋は中学生の頃だ。初恋、と認識したのは1年半だったが、あれは間違いなく恋。3年生で初めて同じクラスになり、所属する書道部のいつメンが仲が良かったせいで、彼女とも話す様になった。
休みがちな彼女だったが、その理由を聞いても「何となく」と返ってくる。特に目立つ訳でもないが、仲間内で弾けるタイプだった。
彼女は休み時間に本を読んでいる様な、そう、殆ど目立たないタイプの僕に、よくちょっかいをかけてきた。消しゴムを隠されたり、ノートにいたずら書きをされたり。
「分かってるぞ、もうやめろよ」
と困る僕を、ニヤニヤしながら面白がっていた。
でも不思議とそれが楽しい。分かるだろうか、この気持ちが。”それ”を待ってしまっているのだ。
数ヶ月経つと、極めつけには朝教室のドアを開けて初めに視線を向けるのは彼女の席だ。「今日は来ているだろうか」と。席に姿が見えない日は、ただ作業をこなすだけのつまらない日になる。あぁ、とため息を吐き、自分の席へ向かう。
ここから1年半後の僕は僕に対して「なんて自分の気持ちに鈍感なんだ」と振り返るが、更に数年後には「自分の気持ちも分からないから人の気持ちにも鈍感なんだ」と気付きを得る事になる。
中学を卒業してから1年、彼女と会う事は無かった。高校は別々で、更にスマホを持つのが遅かったせいで…いや、僕が聞かなかったからだ。連絡先も知らないまま、もう会えないという悲しさもなかったかのように押し殺しただ過ごした。
高校生の僕はよくモテたし、恋人もできたりした。所謂、高校デビューとやらを果たしていた。そんなある日、家で宿題に手をつけていると玄関のチャイムが鳴った。夜8時。母が戸惑いながら
「お友達が来てるわよ」
とドアをノックする。こんな時間に…?
「阿部ちゃーん!久しぶり~」
外から彼女の声がした。
胸の高鳴りがおさまらないとはこの事だ。何故!?どうして!
母に許可を得て、僕は花火をしに外に出る事になった。玄関を出ると中学の頃のいつメンが更に2人。つまり「花火は人数いた方が楽しいじゃん?」との事だった。
突然すぎて理解が追いつかない。何はともあれ、再会を果たし浮かれていたが、冷静なクールキャラを保てていたかどうかは今でも分からない。
それから2年間、毎日のように遊んだ。いつメンと、彼女と会いたくて、そうする為に恋人とも別れた。反抗期、破天荒、それらの言葉は僕にピッタリだった。
そしてその中の1年半、彼女…櫻井とは恋人同士だった。
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