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僕にはすぐに分かってしまった。
彼女はいつも唐突に現れる。この時もそうだった。別れてから何年経っただろうか。浮気された現実を受け入れられず、指先が震え、苦しかったあの記憶が蘇る。
忘れていた。忘れようとしていた。
「櫻井…」
この頃、僕には恋人がいた。この先一緒に過ごすと思った恋人が。だから、断ったんだ。僕は…正しい事をした。
「…」
それでも好きだった。それでも好かれているのか。彼女は泣いて謝った。嫌な気持ちがした。
別れない選択肢もあったはずだけれど、その時の僕は一緒に居ることができなかった。辛かった。どうしようもなかった。
「…いいよ、久しぶりに話そうか」
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