初恋

4/5
前へ
/11ページ
次へ
 僕にはすぐに分かってしまった。 彼女はいつも唐突に現れる。この時もそうだった。別れてから何年経っただろうか。浮気された現実を受け入れられず、指先が震え、苦しかったあの記憶が蘇る。  忘れていた。忘れようとしていた。 「櫻井…」  この頃、僕には恋人がいた。この先一緒に過ごすと思った恋人が。だから、断ったんだ。僕は…正しい事をした。 「…」  それでも好きだった。それでも好かれているのか。彼女は泣いて謝った。嫌な気持ちがした。  別れない選択肢もあったはずだけれど、その時の僕は一緒に居ることができなかった。辛かった。どうしようもなかった。 「…いいよ、久しぶりに話そうか」
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加