電波少女

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「『電波観測』ってなにやるんです?」 「自分のケータイで調べてみたら?」 「いや、この学校はケータイ・スマホの持ち込み禁止でしょ?」  自称進学校の城東高校は校則もきつめ。今、生徒会がケータイ・スマホの持ち込み可を実現すべく頑張っているらしい。うちの学校はバス・電車通学の生徒も多いから、もしもの時のために持っていた方がいいだろうに。実際、去年の東北の大地震以降保護者からの要望も来ているらしい(親友の生徒会長談)。 「どうせ持ってきてるんだろ?」  「そういう手にはのりませんから」 「世渡りはしっかり出来そうだな。そこのパソコンで調べてみるといいよ」  明らかに古そうなパソコンを起動する。モニターもブラウン管だ。 「先生、まだビスタなの? 起動遅いんですけど」 「これでも学校では新しいほうだぞ」 「あ、やっと点いた」  これなら、素直にケータイで調べる方がよかったか。しかし、教室の扉は開いている。いくら諸星先生が許すとはいえ、ほかの先生に見つかっては意味がない。 「んー、なになに、『電波を収束させて天体を観測する装置の総称』。どういうこと?」 「笹原さん、家に衛星放送ある?」 「あります」  鹿児島の地上波ではほぼ深夜アニメがないので衛星放送で視聴している。 「大雑把に言えば電波望遠鏡は衛星放送みたいな仕組みだよ」 「ほうほう」 「衛星放送はパラボラアンテナで電波を受け取るだろう? そして、受け取った電波を電気信号に変えて映像にする。電波望遠鏡の場合は星から来た電波を受け取って星の情報を調べているんだよ」 「なるほど」 「よくわかっていない表情だね」  はい、さっぱり。 「百聞は一見に如かず。実習でいろいろ聞いてみるといいよ」 「そうですね。なんだか興味がわいてきたのでこのコースにしてみます!」  単に説明を面倒くさがられただけな気もするが、まあいいや。  帰宅後、両親にこの実習に行かせてもらえるよう頼み込んだ。母は『若いうちはいろんな経験をするのはいいこと』と賛成してくれた。父は泊りがけである事を心配していたが、県内で開催なので、了承してくれた。  このイベントは全国の高校生が集まるため、応募は審査がある。宇宙に対しての思いを千字以内にまとめて送る必要がある。審査を通過すべく、諸星先生や国語の先生に添削してもらった。 そして一か月後、自宅の郵便受けにA4サイズの厚い封筒が入っていた。
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