卒業式なんか、サボっちゃえ

1/6
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
「遅刻、遅刻〜」  食パンをくわえて、大急ぎでダッシュしてたら、どかん!と、曲がり角で誰かとぶつかった。 「永井先輩、学校は反対方向ですよ」  ぶつかったのは、後輩の清矢君。色白ポニーテールの美少年だ。 「知ってるよ〜、それくらい。でも今日は、学校はずる休みするの。だって、お笑いライブ見に行かなきゃならないんだもん!」  呆れた顔の清矢君を横目に見て、わたしは目的地へと急ぐ。  人気のお笑いライブで、なかなかチケットが当たらなかったから、これはずる休みしてでも行く価値がある。テレビで見ていたコントを生で見られるのは、とってもワクワクするなぁ。  なれない電車に乗り、劇場に辿り着いた時、携帯がピロピロ鳴った。 「もしも〜し」 「しおり、卒業式に休むってどういうこと?」  電話越しでも、ゆきちゃんが怒っているのが伝わる。説明しよう。ゆきちゃんは同じクラスで大親友だ。  卒業式………?やばい、本当にすっかり忘れてた。 「永井さん、電話替わって」  付き添いで来た、亀野先生に携帯を渡す。 「合田さん、永井さんは先生が付いているから安心して」  担任の先生の指示には、流石にゆきちゃんも逆らえまい。しぶしぶずる休みを承諾してくれた。 「まったく、しおりも先生も、無責任なんだから。こうなったら、私が何とかしておくから安心してよね」  頼もしいことに、ゆきちゃんは、二人がいない穴埋めをしてくれるそう。流石大親友だ。 「先生がいないくても、何とかなるんですか?」  疑問に思ったので問うてみた。すると、亀野先生、自信満々で、 「替え玉を用意しておいたから大丈夫」 と、笑顔だった。亀野先生は、よく、授業が面倒になると自習にしてしまうタイプの先生で、しおりは大好きだった。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!