卒業式なんか、サボっちゃえ

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「まもなく、開演いたします」  アナウンスが流れ、暫くして、お笑いライブが始まった。このお笑いライブ、実は先生の旦那さんが出場しているのだ。旦那さんは、10年以上売れない芸人だったが、ここに来て、この人気ライブに呼んでもらえるまでになった。 「ずっと応援していたから、嬉しい」  亀野先生は、早くも感動モードだ。一方でわたしは、ライブの最中も、卒業式のことが気になって仕方がない。クラスのみんなとLINEしていたら、たくさん写真が送られて来た。 「ぷっ!」  送られてきた清矢君の画像に、思わず吹き出してしまった。可哀相に、わたしの代役にさせられてしまったのだ。髪を下ろし、セーラー服を着た姿は、なかなか様になっている。前々から女の子っぽいとは思っていたが、ここまで女装が似合うなんて。  それから亀野先生の替え玉は、双子の妹がこなしているらしい。写真の妹さんは、本当に亀野先生ソックリで、見分けがつかない。これは卒業式も安心だ。ありがとう、ゆきちゃん。    そうこうしているうち、いつの間にか、亀野先生の旦那さんのコントが始まった。コントのタイトルは、「卒業式」。卒業式の後、桜の木の下で、好きな人から告白されるというもの。このコントを見ていたら、大切なことを、思い出してしまった。 「先生、わたし、大事な用事を思い出しました。今日、菜好希くんから、告白されるんです」  まる3年間、一緒のクラスで、菜好希くんとはかなり仲良くした。その彼から、卒業式に、告白したいと宣言されたのだ。 「大好きな人へ思いを伝えるのは、とても大事なことよ。永井さん、彼のもとに行ってあげなさい」  亀野先生の後押しで、わたしは急いで学校へ向かった。体育館では、「旅立ちの歌」が流れていたので、ドアの外でわたしも、合唱に参加した。 「それにしても、中に入りづらいなあ。教室でのんびり待つとするか」
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