卒業式なんか、サボっちゃえ

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 誰もいない教室は、静まり返っていて、わたしのいたずら心をおおいにくすぐった。 「やっほーい!この教室は、今からわたしの支配にある」  初めて教卓の上に乗ると、高揚感でいっぱいになった。こうなったら、どうせ最終日。好きなだけいたずらしてやるぜ。  ベランダに貼られた、危ないの貼り紙をペリッと剥がし、手すりに腕を乗っける。すぐ近くには、卒業式だというのに、花を咲かせない、空気の読めない桜の木がある。 「もう!こんな時くらい、咲いたっていいじゃん!」  無理やり蕾をこじ開けて、桜の花を見せようと奮闘していると、思ったより前のめりになっていたらしい。そのままベランダから落っこちてしまった。 「あわわわわ」  なんとか目の前の桜の木にしがみついた。あいにく、わたしは運動神経がいいので、地面に落下は防げたのだけど、落下の拍子にスカートが破けてしまった。襞スカートの前から、戦隊者ヒーローのパンツが覗いていて、かなり恥ずかしい。このままじゃ、3年間築き上げた、清楚系お嬢様キャラの仮面が剥がれ落ちてしまう!  どうしようかとワタワタしていたら、下校途中の、ランドセルを背負った美少女と目が合った。 「お願い、そこの女の子、梯子持ってきて〜」  確か小学校の体育倉庫(中学校と小学校は隣り合わせになっている)には、梯子があったはず。人を呼んでこようかと言われたが、こんなみっともない姿を見られたくないから、必死に断った。  5分ほど待っただろうか。女の子は、お団子頭の友達を引き連れてやって来た。手には、梯子を持っていなかった。 「ごめん、お姉ちゃん、梯子重いから諦めた。代わりにロープ持ってきたよ」  ロープというか、どう見ても大縄だ。 「まあいいや。この桜の木に括り付けて。あと端をそこの柵につけて」
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