卒業式なんか、サボっちゃえ

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「菜好希くん、ゴメンだけど、菜好希くんのことは、友達としか見ていません。せっかく気持ちを伝えてくれたのに、ごめんね」  わたしの返事に、菜好希くんは、がっくり項垂れた。 「………………、そ、そ、そっか。しおりちゃんが出した答えなら仕方ないね。それじゃあ僕はこれで失礼するね」  涙を流しながら、走り去る彼。可哀相だけど仕方がない。だって、ぱっつん前髪だし、ちんちくりんだし、おまけにオタクはなぁ。彼氏としては完全にバツ。  告白イベントも終わったので、私は最後の綱渡りを終えて、柵を乗り越えた。見物客の小学生二人は、告白が始まってから、空気を読んでいなくなってしまった。 「あ〜あ、今日は色々大変だったなぁ」  アクビをしながら学校の門をくぐる。ゆきちゃんと最後くらい話そう。色々頑張ってくれたし。  卒業式後だからか、みんな写真を撮っていて、カメラに映らないよう移動するのはなかなか大変だった。 「ゆきちゃ〜ん、卒業式いろいろ手配してくれてありがとう」  ゆきちゃんは、得意げに胸を張った。 「そりゃもう、合田ゆき様だもの。クラスのみんな、亀野先生の妹さんに、清矢くんの女装で大盛り上がりよ」  亀野先生の妹さんと直に話してみた。話し方や仕草まで同じだなんて、双子って面白い! 「あっ、先生から電話」  そろそろ、お笑いライブも終わった頃だろうか。 「永井さん、そっちは告白どうだった?お笑いライブはね、大成功よ。夫とライブ後に話をしたんだけど、あんなに受けたの初めてだって。それから言い忘れてたけど、赤ちゃんがお腹の中にいるの」 「妹さん、先生お笑いうまくいったって。あと、亀野先生妊娠してるって」  嬉しい報告に、クラス中大盛り上がりだ。 「亀野先生、ずっと子どもが出来ないって泣いていたのに。嬉しいね」  「卒業式色々あり過ぎて、他のクラスが泣いてる中、うちのクラスだけ笑いを堪えていたのに。まさかここで泣かされるなんて」    
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