一言だけのメッセージ

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一言だけのメッセージ

 うんうん……もう少しでフォロワー数、三百万人達成かぁ。  銀色で眩しいパソコンを見つめながらうっとりと夢見心地になる。あたしには場違い過ぎる位置に来てしまったなぁ。  炎上などが原因で活動を辞める人だって少なからず存在する。そんな中で、ホロトはVライバー最上位まで上り詰めた。凄い。凄すぎて困っちゃう。    ま、投げ銭なんてあっという間に消えるんだけど。と言っても誰かにそれを盗まれたわけではない。詐欺で騙されたわけでもない。ギャンブルだ。競馬に競艇、パチンコ・スロット、その他諸々……。あたしはそれらにお金を注ぎ込んでいる。  けどさー、投げ銭で数百円程度しか出さないファンがいる。だってトップランクのあたしだよ? 金を払わないとかサイテー。  「あーだりぃ」と愚痴をこぼしつつ、ライターで煙草に火をつける。するとピロン、と通知音が無邪気に踊る。ちっ、今から至福の時間なのにぃ、とぼやきながらパソコンを確認すると誰かからのDM(ダイレクトメール)が送られていた。  これ、お気持ちメールという名のクレームか? もしくは厄介なアンチがネチネチ粘着しに来たか。面倒臭いな、ったく。  少なくとも気持ちの良いメッセージではなさそうだ、と予想してからDMを開く。……やっぱり嬉しい方のメッセージではなかった。ただ、それは予想の斜め上を突いていた。  メッセージは『久しぶり』だけだった。 (久しぶり、って何?)  これを送信したのは誰だろうかと疑問に感じたあたしは、ニックネーム欄に目をやる。そこには「64」と表示されている。何かに関連があるのだろうか? 語呂合わせで虫、蒸し、無視、とか?  ま、この場合は荒らしか不愉快にさせたい目的かな、気にしないのが一番だよね、うん。そう思いながら「64」のアカウントをブロックしておいた。よし、これで大丈夫でしょう!  ってゆーか、匿名や偽名などで作成したアカウントで『久しぶり』って送信してくるのも変な話だよね。自分自身で出した結論に納得しながら、改めて煙草を吸う。ふーっ、と狭いゴミ部屋(ちなみに一軒家でーす!)の中で白い煙がゆらゆら踊った。  ただ、この話はこれだけでは終わらなかった。
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