Vライバー、黒須ホロト

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Vライバー、黒須ホロト

「タコのすけさん、沢山のボックスありがと〜。みるぃさんも大量のボックスサンクス! いつも助かってるよ〜」  あたしの真正面にあるパソコンの画面では、キラキラと光るエフェクトが次々と流れ込み、視聴者からのコメントもまるで滝のように押し寄せる。 「コメント読むね。なになに……『黒須(くろす)ちゃんの歌、めっちゃ可愛くて困っちゃう!』だって? ホロト、そんなこと言われたら照れちゃうんだけど〜」  あたしは黒須ホロト。でもそれは仮名(かめい)であり、怪盗のような仮の姿に近い。彼女は二次元の存在で、あたしの動きに連動して画面の中で口をパクパク開いたりにっこりと笑ったりする。そう、あたしはアバター(自分の場合はホロト)を用いて配信を行う「(バーチャル)ライバー」なのだ。  Vライバーの中には企業からの支援を受けて活動する「企業勢」もいるが、あたしは個人で配信をする「個人勢」。そしてなんと、黒須ホロトは今話題沸騰中の個人勢Vライバー。フォロワー数やライブ視聴者数も桁違いだ。  また、あたしの活動しているVライバー専用配信サイトでは投げ銭システム「ボックス」というものを利用している。これを配信しているライバーに届けて場を盛り上げたり、推しに貢いだりしようって話。ボックスを届ければ視聴者はライバーと繋がることが出来たり、ライブ配信を鮮やかに彩れたりするし、ライバーは単純に金稼ぎになる。一石二鳥だ。  「えーと……はなる〜なさん、ボックスありがとう!」  画面の向こうでホロトがゆらゆら揺れる。エメラルドグリーンのツインテールもふわり、と風に(なび)いたかのように揺れ揺れる。視聴者に「ありがとう」って伝えるけれど、感情など込めていない。可愛く振る舞えば、盲目信者が金の嵐を巻き起こしてくれる。あー、今日もガッポガッポ稼げたよ、ラッキー! としか思わない。 「よーし、ホロト、次は最近話題のオセロアプリをやろっかな。これはただのオセロじゃなくて〜」  コメントは盛り上がっているけれどボックスは届かない。ちっ、早く金払えよと心の中で舌打ちしながら、それがバレないように明るいトーンで話を続けた。
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