音音恋 空

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それが… ある日起きると何故か目の前が明るい… いや 朝だから明るいのは当たり前なんだけど モヤが晴れたようにスッキリした感じ… いつものように大事そうに抱えてくれている腕の中から抜け出しリビングへ行く。 うん やっぱり昨日とは全然違う。 雪とナイトも寝起きの伸びをして 足元にすりよる。 かがんで頭をなでる。 「奈生?何してんだ?」 私がキッチンにいることにびっくりしてる仁。 そうだよね ここ数ヶ月 とてもじゃないけど キッチンなんて立てなかったから… 「朝起きたら なんかさっぱりしてて。起きてみても 大丈夫だし 久しぶりに料理したくて。」 それでもまだ私が無理してるんじゃないかと 訝しげに見てるので それを見てる私のほうが吹き出した。 「悪阻 終わったのかも…」 「昨日まで 吐いてたのに? そんなにガラッと変わるのか?」 そんなこと言ったって 私だってわかんないもん… ブスッと唇を尖らせた私を 嬉しそうに抱きしめてくる。 「良かったな…長かったな。 頑張ったな。」 いや 頑張ってくれたのは仁だから… 仕事も減らしてたんだろうに… 「奈生の卵焼き!久しぶり〜! もう 一生こうなのかと心配したわよ。良かったわね〜。」 「ご心配おかけしました。 少しずつ動くから ショップにも出るね。」 「無理しないでね。そうそうワンピース作ってるからね。 スーツきつかったら JINが買ってくれたイタリアの着て出ていいわよ。」 「無理して出なくていいぞ。 立ち仕事だし…」 まあそうだけど 気分転換したかったらいつでも出てね、とTAIGAが笑ってる。 それより テレビ… いつから出れるかな… もう需要なくなってるかもね。 それだったらそれで家でゆったりするのもいいよね。 お腹を擦り話しかける… 落ち着いたということで テレビの仕事も復帰。 マサナリさんが MCも座ろうとテーブルを前に座るようにしてくれた。 これは嬉しい。 脚をカメラを気にせず楽にしていられるし… 早々に 愛の逃避行の結果はどうなったの?と突っ込まれたけど… 「マサナリさん ありがとうございました。 助かりました。」 「いや 俺は何もしてない。 」 「テーブルと椅子で 気が楽でした。 正直 脚を斜めにしているのって結構腹筋使ったりするので…本当に助かりました。」 ウンウン、と頷いて笑ってる。 「でも 昔の子達にも こうやって気をつけてあげたかったって後悔してるよ。いくら時代がそうだったからって 可哀想なことしたな、って反省してる。 こちらこそ ありがとう、なんだよ。」 そっか…そうだよね ほんの最近なんだよね。私はラッキーなだけ… 感謝だよね。 「産休しっかり取ってよ。 ちゃんとね。」 そう…きっとあと半年もしたら産休になっちゃう。 あっという間… やれるだけやるだけ。 必要されている間は頑張ろう。 「奈生 母子手帳持ったか?」 「えっと…」 バッグの中 ゴソゴソと探す私に 何か言いたそうな仁。 しっかり整理整頓しとけって言いたいんでしょ? 仕方ないじゃん 洋服に合わせてバッグ変えたりしなきゃだめなんだから… こっちだって… 「大丈夫 あるよ。」 少し目立つようになったお腹。 シューズはペタンコで JINが買ってくれたワンピースがマタニティ代わりにもなるので重宝。可愛いし こんなに着回し出来るなんて思わなかったけど 頻繁に着ている。 「どっちだろな?」 「う〜ん…なんか男の子じゃないかな…? 動きがすごいし… 麻衣さんが 手脚長いわって 仁に似てるんじゃない?って言ってたから。」 「女の子も可愛いから… 俺に似るんだったら男の子でいいけど 女の子だったら奈生に似てほしいんだけどな。」 「そしたら 奏ちゃんだよね?」 そう奏ちゃん お姉ちゃんにもちろん似てるんだけど 角度で私にそっくり、と言われてる。 そんなことを話す待合室の中 マタニティさんばかりで… パパさんは今回は仁だけ? 今日あたりには性別はっきりするかな?と言われ 毎回ついてきてはいるけど 俺がいない時に行くな、と念を押されてた。 安定期だけど 新幹線より車が楽、と言ったら仁は嬉しそうに運転してくれた。 「どうする?実家に行く?」 「行かない。マンションから電話する…」 親不孝者、とこづかれたけど マンションでゴロゴロしたいし もう少しで仁と二人の生活も終るから… 「あっ お母さん? うん 大丈夫だよ。 仁が付いてきてくれたから。 うん それでね。 男の子だったの。 そう。 うん。 だから お父さんに伝えておいてね。 帰らない。 産んだらかえるから。 じゃあね。」 ························
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