音音恋 空

1/153
10人が本棚に入れています
本棚に追加
/153ページ
「奈生!」 声のする方に顔を向ける… 今日は祥也か… 「梨花、福、送ってくから… 乗って。」 顔を見合わせる二人を無視。 「寮まで送ってあげて。」 と助手席に乗り込む。 いいよ、と笑う祥也。 まだ動かない二人に 早く乗って、とウインドウを開け声をかける。 「「すみません…」」 「どういたしまして…」 言わなくても寮までの道は知ってる。 「祥也 なんで? 珍しいね 私を迎え来るって。」 「あぁ 久と和人が まだ帰れないから、って連絡きたんだよ。」 「あのさ いつも言ってるよね? 無理に来なくていいんだよ? ちゃんとバス定期あるんだからさ。 バスで帰るから…」 「まあ いいじゃん。 俺もこれない日は来ないよ。」 祥也は私の彼ではない。 話に出た久も和人とも付き合ってるわけではない。 病院に併設されている看護学校に働きながら看護師のライセンスを取るために 春に入学した。 私は自宅から 梨花と福は寮生活。 同じ班になり仲良くなり 病院でも学校の往復は一緒にするようになった。 午後の講義の時は 学校近くに彼氏達の車が並ぶ。 彼氏の車に喜々と乗り込む学生達。 私もそう思われているんだろうけど… 週3日午後講義があるけど 彼氏の迎えの子達は いつも同じ車…当たり前だけど。 私は毎日とは言わないが 迎えに来るメンバーにより車が変わるので 二股どころか日替わり彼氏と言われてる…らしい。 言うだけ言って私本人に確認もしないで面白おかしく噂にする。 梨花と福はわかってるから 彼氏じゃないと言ってくれているが 誰も信じないらしい… そして 今日の祥也は 隣クラスに彼女がいる。 それなのに 私を迎えに来たから問題なんだよね。 「祥也さ 絵里に怒られない?」 「もちろんわかったら怒られるだろ。 もう気にしなくていいって。」 「だったら来なくていいんだって。 私が原因で喧嘩とか嫌だからね。」 「奈生は気にしなくていい。 友達だから、でいいし?」 「私だったら 彼氏が友達とはいえ女を隣に乗せたら嫌だけど?」 「仁さんは乗せないか?」 「乗せても悪がらないよね。。」 「だよな。 でも 奈生の隣に男がいるのは嫌がるタイプだよな。」 「そうかな… でも男ってそうじゃないの? 祥也だって絵里が隣に男乗せたら嫌でしょ?」 「ん…かな? 関係ないけどな。 別れるし。」 「別れたいって思ってるのに別れないってわからないわ。」 「奈生 仁さんと 別れるつもりだろ?」 「ん…会えないし 会わないし。 こうなると付き合ってんだかなんだかさ わかんないよね。」 後ろの二人は 黙って聞いてる。 仁 本当に私 別れるつもりだよ。 信じてないみたいだけど… 「仁さんに言ったか?」 「言ったけど 信じてないみたい。」 「俺と付き合うって言って。」 「なんでそうなんのよ…」 「後ろの二人が証人な? 俺 初めっから奈生狙いだったよ。 奈生が彼氏がいるって言うから 絵里が付き合ってくれって言うから まあいっかってOKしたけどさ。 仁さんと別れるなら 話が変わるから。」 ひぇ~っ… 祥也は 話しやすいし話合うし一番男女区別なく気が合う友達だと思ってたけど これはヤバイよ。 「あのさ 仁が…」 「仁さんが どうのこうのは もう関係無いから。 お前 学校で日替わり彼氏で有名だってなってるんだろ? それやめよ 俺だけにしとけよ。 久も和人も他のやつも 俺から断るから。 まるきり淫乱女になってんだぞ? まともに彼氏ともやってないのにだぞ? もう やめよう。 絵里には もう話したんだよ。 納得してなかったけど。 それでさっきの噂を俺に親切に教えてさ。 最低だろ… お前 そんなんじゃねえのに。」 「仁もちゃんとわかってくれてるよ… 噂のことも知ってる。 だから…」 「だから? まだ付き合ってるってか? もう別れるって言ったよな? とにかく これから俺しか迎えに来ないから。 もし他のやつが来たらバスで帰れよ?」
/153ページ

最初のコメントを投稿しよう!