またひとつ屋根の下

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二十歳を迎える僕の誕生日は、春の大型連休前。大学二年生、慣れてきたけどちょいちょい新入生に間違えられてちょっと悲しい。 誕生日、去年は夏南央先生と二人で祝えた。今年は賑やかになった家で、皆んなに祝って貰う。二十歳の誕生日っていう事で珍しく父親と母親も顔を出して、まるで小さなパーティー会場みたいになってて夏海くんが驚いていた。 「これで葵葉も酒が呑めるんだな!」 「何だよ、お父さん、そんなに誰かにお酒を呑ませたいの?」 夏南央先生にお酒を呑ませた事を思い出す。 まぁ、お陰で僕と先生の初めてのキスになったけど、先生は覚えていないんだよね。 訊いてみようかな、覚えているか… 。 「え? 何?」 「お父さんとさ、レストランに行った時、お酒を呑まされた事覚えてる?」 僕の部屋で二人、先生は大学の教科書なんかを開きながら聞き流している。 「聞いてる?」 「あ? うん、何?」 「もうっ!先生がお父さんにお酒呑まされて酔っ払っちゃった時の話し!」 「ああ、あれは我ながら情けなかった」 笑いながら言うから、やっぱり覚えてないんだと思って、ちょっとガッカリ。 「葵葉と初めてキスした時の事だろう?」 え? 覚えてたの? っていうか… え? だってあの時はただの先生と生徒だったじゃない… 僕は好きだったけど。 やっぱり覚えてないのをガッカリしたくせに、覚えていたと知って狼狽えた変な僕。 ベッドに座っている僕の隣りに座ると、先生がキスをしてくる。 「葵葉の唇が欲しかったから」 そう言いながら、はむはむと僕の唇を甘噛みする。 「先生… ねぇ、いつから僕の事を… う、ぅぅん、ああぁん… 」 倒されてシャツの中に手を入れ、先生の指が僕の乳首を弄る。 「いつからかな… 俺にも分からない… 」 シャツをグッと捲り上げると左の乳首を舌でコロコロと転がし、右の乳首はクリクリと軽く摘み、左手は僕の口の中に入れて遊んでいる。 「声、気をつけろよ」 先生がここに越して来て、ヤりたい放題だと思ったけれど、なかなかどうしてこれが気を遣う。 雷太さんの部屋は下だから大丈夫だけど、先生の部屋の前が夏海くんの部屋で少しでも遠く、と思ってセックスするのは大抵僕の部屋。 でも、大きな声が出てしまいそうになって焦る事が多々あり。 大きな声が出ない様に先生に手で口を塞がれてセックスすると、何だか犯されているみたいでちょっと興奮した。 ゴミ出しは僕と先生の仕事。 だって、愛し合った後の物を捨てるのだって気をつけないとだから。 ✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎ 「あーおーばっ!」 そんな風に大学で僕を呼ぶ人なんていないから、キョロキョロと周りを見回した。 僕の事? かな? え? 二階堂(にかいどう)理士(さとし)。 同じ学部で同級なのは一年生の時から知っていた。 『ミスターK大』候補、K大では四年生の中から毎年『ミスターK大』が一人選ばれる。先生が在学していたら、絶対に選ばれていただろう称号。 話した事なんか無かったから、そんな風に呼ばれて、ぽかんとした顔で彼を見つめた。
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