不穏な匂い

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それでも雷太さんと夏海くんと三人で食べる食事は楽しかったし、雷太さんの料理は変わらずに美味しい。 先生から何か連絡が来るんじゃないかと、そばに置いたスマホを何度も見てしまう。僕の家に行く事はメールで知らせた、それから何の音沙汰も無い。 その様子に気付いている雷太さんと夏海くんが心配そうに僕を見るから、 「あ、ごめんなさい」 って、顔が引き攣って謝った。 「こんばんは〜」 先生だっ! 夏海くんと二人、思わず立ち上がり玄関に迎えに行こうとすると、夏海くんが遠慮して僕だけが玄関に到着。 「ねぇ… 誰? あの女の人」 開口一番、堪らずに訊いてしまう。 「ん… 後でちゃんと説明するよ… とりあえず雷太さんに挨拶… 」 「嫌だよっ!ちゃんと今、説明してよっ!」 気になって仕方なかったし、すごく不安だった。 夏南央先生は男の僕を好きになる事に抵抗を感じていたんだ、いつまた女性を好きになってもおかしくない。 グイッと先生の腕を掴んで引いた。 グイグイと先生の腕を引いて、二階の僕の部屋へと向かった。 「誰?説明して」 僕はもう涙声で、先生の顔が困っている。 「うん… レンタル彼氏してた時の客」 やっぱりっ! 僕は先生を壁に追いやって、先生のチノパンのジッパーを下ろした。 「なっ!何すんだよっ!」 下ろそうとしている僕の手を掴んで止めさせようとする。 「確かめるんだ、ヤってないか、あの(ひと)とヤってないか」 「ヤってねーよっ!」 ふざけるな、という感じで僕の手を掴むと投げる様に払うから僕がよろけて床に手をついた。 「ごめん、葵葉… 」 よろけた僕の傍に急いで寄って起き上がらせてくれる。 「だって… だって、やっぱり女の人の方が… いい、とか… そう、思うんじゃないかって… 不安、なんだもん… 先生とは… いっぱい… 会えない… し… 」 涙で声が詰まって上手く話せない。 「ん、ごめん… 」 「せ、んせい… カッコいいし… 」 「この状況で褒めるのか?」 少し笑いながら僕を抱き締めた。 「俺は葵葉しか見てないし、葵葉しか欲しくない、本当だ本心だ、信じてくれないか?」 耳元でハッキリと言ってまた、強く抱き締めてくれる。 「あの女とメシ食ってた。じゃないとバイトしてた事、夏海にバラすって言われて… 」 ご飯だけなら、百歩譲っていいとして(よくないけど)、それがセックスしてくれだったらどうするの?どうしてたの? 「そんな風に言う事聞いてたら、キリがないじゃない」 「ああ、でも… 」 夏海くんには弱い先生、レンタル彼氏のバイトをしていた事は知られたくないんだろうとは思った。 でも、これ以上に何か言われたら僕だって嫌だ、また何処かで誰かとバッタリ会ってこんな事は絶対に嫌だ、受験生の頃とは違う僕は先生に意見をする。 あの頃とは違うんだからね、僕。
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