緋襷師匠

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また今日も殆ど眠れませんでした。 どうやら私の事を白井さんも調べておられた様です。 昨日、料理屋で白井さんは私の事を「松本政貴」と呼ばれました。 それが私の本名です。 訳あって母方の姓を名乗っていますが、私は板垣退助の孫なのです。 私は蒲団から出ると、大きな溜息を吐きました。 いつかは知られてしまう事を覚悟しておりました。 知られてしまう事を心配しているのではありません。 私が先生の所に居る事で、皆さんに迷惑を掛けてしまうのではないかという事を考えると、溜息しか出て来ません。 部屋を出ると、希世さんは既に来られていて、私の代わりに練炭に火を入れておられました。 「あ、すみません…。少し寝過ごした様で…」 私は希世さんに頭を下げました。 「いいえ…。要さんもお疲れでしょう…。ゆっくり休んでおられても良いんですよ…」 そう言ってニッコリと微笑んでおられました。
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