桜に騙されてきた20年

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ

桜に騙されてきた20年

かさっと鳴った あの日だ。 あの木漏れ日の中、高い木から飛び降りた 今よりもっと自由だった。 今よりもっと楽しかった。 忘れていたのは、何もわかっていないということ。 やり直そう。 大人のふりをするのをやめよう。 ずっとかさっと慣らしていこう。 春風に舞う桜に騙されてきたわたし。 桜のように生きてくれと名付けられた重荷。 桜に騙されたバカな親の身勝手に、私は二十年も苦しめられてきた。 だったら松と名付けてくれたら良かったのだ。 刺々しく空に歯向かう自分が好きだ。 そのことに気付いたのだ。 桜のような女ではなく、松のような男の心をもった女だと。 春は私の二十年を飼い殺しにしてきた。 相川桜は、桜の木に斬り込みをいれている。 「散れ、桜」 でも、ほんとに散ってほしいのは、女で生きてきた過去と、男で生きたいと願う未来。 相川桜は力なくひざまづいた。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!