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「嫁入り前の姉の顔に傷をつけるとは、一体何を考えている!」
その後デイジーは、異母姉の告げ口により国王に叱責されることになった。デイジーの母や兄弟姉妹たちは、デイジーのことを冷ややかな目で見ている。
ただでさえ精霊を生まないデイジーは役立ず。そんなデイジーが他国に嫁入りする異母姉の顔に傷をつけたと聞いては、心中穏やかではいられなかった。誰が喧嘩をふっかけたかなど、この際関係ない。ここでは、立場の弱いデイジーがすべて悪いのだから。
ジギスムントなど、さっさと引き渡してしまえばよかったのだ。
精霊の生まれない黄金の卵など、割れても構わなかったのに。
どうせならさっさとどこかの好事家へ、デイジーごと黄金の卵を売り払ってしまえばよいものを。
デイジーの「家族」で、デイジーを心配するものなど誰もいない。口に出されずとも、彼らの思いは雄弁に彼女に伝わり、心が深くえぐられていく。
そんな中でジギスムントだけが、デイジーの隣に立ち続けてくれていた。風の精霊の力を借りてデイジーにだけ聞こえるように励ましの言葉を伝えてくれる。
「デイジー、お前は悪くない。あいつらが何もわかっていないだけだ」
「ありがとう。でも、私がもっと上手に立ち回れたらよかったの。あなたにも迷惑をかけてしまったわ」
「デイジーにかけられるなら、どんな迷惑だって俺は嬉しいよ」
「ねえ、ジギスムント。私が何を選んでも、あなたは私と一緒にいてくれる?」
「当然だろう」
これからデイジーが何をしようかなんてジギスムントには説明をしていないと言うのに、彼は力強く頷く。
(ああ私の家族は、最初から隣にいてくれたのだわ)
そのことに気がついたデイジーは、ゆっくりと微笑んだ。
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