追憶

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追憶

「…………あ」  不意に、僕の右肩へそっと何かが舞い降りる。見ると、それは仄かに赤みを帯びた一片(ひとひら)の離弁花――桜の花弁だ。この季節が巡る度、この花を目にする度――懐古のような、悲哀のような感情(おもい)が胸を去来する。僕はこの季節を――この花を、どうしても好きになれない。  だって、美しくも儚いこの花を見ると、どうしても思い出すから。――どうしても、あの幻想的な少女の姿と重ねてしまうから。
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