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少女の正体は桜の樹――荒唐無稽にもほどがある発言だと自分でも思う。それでも、彼女の言葉からもこれ以外の可能性は脳裏に浮かんでこないし――何より、現実味の欠片もないこんな推測に、どうしてか僕自身、深く納得を抱いてしまっているんだ。
すると、少し間があった後――
(――うん、正解だよ。流石だね湖春。それから……今日は、お別れを言わなきゃ駄目なの)
「………………え」
刹那、心が硬直する。その間にも、霞の向こうからは悲愁を帯びた声で言葉が続く。
彼女の話によると、近々神社が取り壊されることになるという。その際、この桜の樹も処分されてしまう予定だという。
と言うのも、ここは十年ほど前から経営難により廃社となっていたのだ。だからこそ、わざわざ数百段もある階段を上がって参拝するような人なんていない――とまでは断言しかねるけど、少なくとも僕は会ったことがない。そういった事情もあり、今までずっと一人で感慨に耽ることが出来たわけでして。
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