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不思議な少女
「……ふう、やっと着いた」
半ば息を切らしながら数百段もの階段を登りきった僕の眼前に現れたのは――ここから先は聖域であることを告げる神社の象徴、鳥居である。
もう幾度となく足を運んでいるとは言え、それでも毎度のようにその荘厳な雰囲気に身の引き締まる思いがする。
ゆっくり足を踏み入れ境内を進んで行くと、この聖域内において一際存在感を放つ神様のお住まい――社殿が二匹の狛犬に守られるように聳えている。……だけど、僕がここに来た一番の目的は――
「……やっぱり、今日も綺麗だ」
境内の隅へと歩みを進めた後、一人感慨に浸りそんな呟きを洩らす僕。そんな僕の視線の先に映るは――この空間全てを優しく見守るように静かに佇む、一本の小さな桜の樹だ。……そう、こうして聖域で一人、この桜の樹を眺め過ごすのが僕の至福の――
「…………え?」
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