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突然の事態に驚き振り返る僕。……いや、この言い回しは少し大袈裟かな。後方からそっと肩を叩かれただけだし。ともかく、振り返ってみるとそこには――
「…………えっと」
そこにいたのは、恐らく僕より少し年下くらいの女の子。爽やかな白のワンピースに少し大きめの麦わら帽子――そして、そこから覗く綺麗な薄桃色の髪に、水晶のように透き通るつぶらな瞳。僕が評するのも何様という感じだけど……紛れもなく美少女と言って差し支えないだろう。
……ただ、それはそれとして。
「……えっと、僕は皆川湖春と言います。……えっと、もし良かったら、君の名前を教えてほし……」
「…………」
思わず、言葉が止まる。何故なら――僕に注意を向けさせたはずの少女が、何一つ言葉を口にする気配もなく、ただ淡く微笑みを浮かべているだけだったから。
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